2015年、フランス・パリの街角で、あるショッキングな出来事が起きました。
動物愛護団体「Cause Animale Nord」が、路上生活をしていた男性から子犬を力ずくで奪い去る――その瞬間を捉えた動画がSNS上で拡散され、瞬く間に世界中の人々の心を揺さぶりました。
動画には、泣き叫びながら愛犬を守ろうとする男性の姿、必死に抵抗するも振り払われる様子、そして何より、怯えた子犬の鳴き声が記録されていました。
その光景は、まるで「救出」ではなく「略奪」。
“保護”という正義の仮面をかぶった暴力にも見えました。
■ 団体の主張と、沸き起こる疑問
団体はこの行為について、「男性が犬を物乞いの道具に使い、さらには薬物を与えていた疑いがある」と説明しました。
しかし、その主張には明確な証拠はなく、「ホームレスである」という一点だけが、彼の愛や信頼を否定する材料になっていたようにも思えます。
「貧しい者には動物を飼う資格がない」
そんな暗黙の偏見が、行動の裏に潜んでいたのではないでしょうか?
■ ネットで広がる怒りと支援
この事件は瞬く間にSNSで拡散され、抗議の声とともに24万人を超える署名が集まりました。
その結果、団体代表は行動の不適切さを認め、子犬は無事、男性のもとへ返還されることに。
世界中から、彼と子犬の絆を守ろうとする人々が声を上げたのです。
■ しかし、終わらなかった“暴力”
子犬が戻ってからも、男性の闘いは終わりませんでした。
SNS上での誹謗中傷、無断で晒された顔写真、さらには根拠のない噂。
「犬を取り戻した」その一点をもって、再び彼はネットの矢面に立たされたのです。
弁護団は名誉毀損やプライバシー侵害で団体および関係者に法的措置を取りました。
命を守るはずの“正義”が、また一つの命を追い詰めていたことを、私たちは忘れてはいけません。
■ 現在の彼と子犬の生活は
事件から約10年。現在の彼の生活は報道されていません。
しかし、当時の支援者たちの寄付や支援により、彼と子犬は一時的に安定した生活を取り戻したと伝えられています。
その静けさが、ふたりが平穏を取り戻した証であることを、心から願っています。
■ 正義とは、誰のためにあるのか
この事件は、動物を守るという美しい目的の裏で、どれほど人の心が傷ついたかを私たちに教えてくれました。
「かわいそうだから助ける」――その思いが、時に残酷になり得ることを。
動物も、人間も、守られるべき存在です。
「命」を想うなら、その命の背景にある“絆”や“尊厳”にも、どうか目を向けてほしい。
力ある正義が、弱さと共存できる世界であってほしいと、私は心から願います。
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